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2025.06.23 研究ニュース
獣医学専攻2年の関大智氏らが犬と猫では麻酔中の低血圧に対する昇圧薬の効果に違いがあることを明らかにしました
本学獣医学専攻2年の関大智氏、本学獣医学科の山谷吉樹教授、手島健次専任講師および合屋征二郎専任講師により実施された研究成果が、The American Veterinary Medical AssociationのOfficial Journalである Journal of the American Veterinary Medical Associationに掲載されました。
犬と猫では麻酔中の合併症として低血圧が一般的であり、その治療として昇圧薬の一種であるエフェドリンが用いられてきました。しかしながらエフェドリンが犬や猫の心拍数や血圧に与える効果に関して、専門家の中でも統一見解がなく、詳細は不明のままでした。
本研究では、麻酔中に低血圧になってしまった1,600例を超える犬と猫のデータを回顧的に調査することで、エフェドリンが血圧や心拍数にどのような影響を与えるか解明することを目的としました。その結果、猫では心拍数を低下させることなく十分な昇圧効果が得られた一方、犬ではエフェドリン投与により心拍数の低下を引き起こしてしまうため十分な昇圧効果が得られないことが明らかとなりました。しかしながらエフェドリン投与前にムスカリン受容体阻害薬であるアトロピンを投与すれば、犬においてもエフェドリン投与によって心拍数の低下なしに十分な昇圧効果が得られることも明らかとなりました。対照的に猫ではエフェドリン投与前にアトロピンを投与することの臨床的意義は小さかったです。
本研究は、同じ昇圧薬でも犬と猫では血行動態に対して異なる影響をもたらすことを明らかにし、犬と猫における麻酔管理をより安全に行うための知見を示しました。また、犬は猫と比べて迷走神経反射による徐脈を引き起こしやすい動物である可能性が示唆されました。
研究助成:
本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金 若手研究(課題番号:19K15997)の助成を受けて実施されました。
https://doi.org/10.2460/javma.25.01.0038
