GRADUATE SCHOOLS各分野専攻の概要
生物資源生産科学専攻
本専攻は植物生産科学、動物生産科学、水圏生物生産科学、森林生産科学、生産環境工学の5分野から構成され、生物を用いた生産に関して生物資源と生物環境の両面から総合的に捉え持続的、有効に管理・活用するための多面的な研究を行います。広い視野から問題点を把握し、その問題を解決するための応用力を育成します。
(1)植物生産科学分野
有用植物に関する栽培、育種、生理、栽培土壌、病害虫対策など、生育特性や生育環境について教授します。遺伝子保全や生物の多様性保持、さらには地球的規模での広い視点から生産可能な土地利用や食料の供給能力についても知識を深めることで、植物の生産性の向上につながる研究を行います。
(2)動物生産科学分野
育種、繁殖、飼養管理など動物生産に関わる研究と教育を行います。育種では乳肉用牛、豚、鶏を対象にし、繁殖では豚を中心に基礎的な繁殖生理学的研究から応用研究まで取り組みます。飼養管理では牛などの反芻動物を中心とした栄養学研究、微生物の代謝に関する研究、さらに牛、豚、鶏を研究対象に新しい飼料資源の研究も実施しています。
(3)水圏生物生産科学分野
水圏生物の探索、保全、増殖などの技術開発に関わる講義および研究指導を行います。水圏生物の行動,生理,生態的特性を考慮した資源の探索と保全,生物生産環境や餌料生物に関する最新の知見を利用した養殖技術、および新たな水圏生物資源の増殖方法開発に関する講義と研究指導を行います。
(4)森林生産科学分野
森林の生産基盤の構築と管理に関する課題について、講義および研究指導を行います。特に生物多様性、樹木と動植物、昆虫、微生物の共生と相互作用、森林生産現場における技術的生産管理法、森林資源生産に必要となる情報管理法、林分スケールから流域スケールまで多様な観点からの持続的生産管理法などに関する研究手法の指導を行います。
(5)生産環境工学分野
施設や自然環境での作物・家畜の生産向上をめざした環境にも優しい工学技術を研究します。具体的には、植物工場等におけるLEDの利用と植物反応、再生可能エネルギーの利用、高度環境制御、農産物の貯蔵環境と品質保持、主な成分分布の3次元計測、バイオマスの利用等の研究を通じて産業界でも応用可能な能力を身につけます。
応用生命科学専攻
応用生命科学専攻では、生命工学的手法により深く生物を理解すると同時に、得られた知識を新たな生物資源の創製に応用する研究を指導し、社会において新しい価値の創出をになう人材を育成します。環境・エネルギーなど現在人類が直面している諸問題を視野にいれ、自ら課題を設定しその解決策をみいだす能力の育成にも重点を置いています。
(1)生体分子科学分野
生体を構成し生命の維持に直接関わる生体高分子成分としてのタンパク質および核酸の構造、機能、発現調節機構、ならびに細胞内あるいは細胞外で機能する各種低分子生体成分の化学構造、生理作用、生合成に関する講義・演習・研究指導を行います。
(2)細胞生物学分野
動物細胞の分化・発生、植物細胞の構造・代謝の多様性、有用動植物の作出、ゲノム情報に基づく遺伝子資源の開発・利用等について講義・演習・研究指導を行います。さらに、細胞機能発現機構の解明および遺伝子資源の継続的利用のための基礎および応用研究について指導します。
(3)生体機能学分野
多細胞生物の様々な機能発現・制御に関して、個体レベルから器官・組織・細胞・分子レベルで作用する因子の構造と機能に関する講義・演習・研究指導を行います。さらに、環境への適応あるいは外部刺激に対する応答の係る生体諸機能の発現と制御に関する研究を指導します。
(4)分子生態学分野
微生物を中心とした環境中における生物量、生物間相互作用等、生物動態を分子レベルで解明するための研究手法、およびそれの生物学的意義・利用について、また環境中における生物間の相互作用および共生生物が産出する有用資源の生産技術等について講義・演習・研究指導を行います。
生物資源利用科学専攻
本専攻は、生物資源利用学、生物資源利用化学、微生物利用科学、食品科学の4分野から構成され、講義、演習、および研究指導と、学生自身による研究活動を通して、生物資源の利用に関する高度な知識、技術、および発想力を身につけ、生物資源を有効に利活用するための高い研究能力を備えた人材を育成しています。
(1)生物資源利用学分野
多種多様な生物資源を有効に利活用するために、これらを構成している物質の種類、成分、特性、および生理機能を明らかにするとともに、それらの高度利用を図るための知識と技術の伝授、および研究指導を行います。これらを通して、生物資源を有効に利活用するための研究・技術の分野において活躍できる人材を育成しています。
(2)生物資源利用化学分野
生物資源のより高度な有効利用を図るために、それらに含まれる低分子および高分子有機化合物の単離、同定、構造解析、および機能解析に関する方法と技術を伝授するとともに、それらに基づいた研究指導を行います。これらを通して、物質レベルで生物資源を有効に利活用する研究・技術の分野において活躍できる人材を育成しています。
(3)微生物利用科学分野
様々な微生物資源を高度に利用するために必要な一般微生物学、微生物利用学、環境微生物学、微生物分子生物学などの、微生物に関する基礎ならびに応用に関する知識と技術を伝授するとともに、それらに基づいた研究指導を行っています。これらを通して、微生物資源を有効に利活用する研究・技術の分野において活躍できる人材を育成しています。
(4)食品化学分野
食品成分の特性と変化、成分間の相互作用と変化、成分の機器分析法、さらには、食品の製造における原料の物性、加工特性、加工技術、および応用が期待される新技術などに関する知識を教授するとともに、それらに基づいた研究指導を行います。これらを通して、食品産業の研究・技術の分野において活躍できる人材を育成しています。
生物環境科学専攻
ストレス耐性科学、環境計画学、環境創造保全学、環境情報科学の4分野から構成されています。細胞から地球環境までを研究対象とし、生物、特に人間と環境との適切な関係を考究します。生物環境科学にかかわる、基礎から応用までの研究手法と技術を指導し、優れた研究能力や高度な専門技術を備えた人材の育成を目的としています。
(1)ストレス耐性科学分野
環境ストレスに対する生物の適応能や耐性機構等の解析、環境の保全や劣化環境の修復のための適応生物や耐性生物の選抜・利用に関する分野です。特に、環境ストレスに対する生物の応答機構や耐性機構の生理・生化学的および分子生物学的、さらには生態学的な解析を通して、環境修復に活かすための講義と研究指導を行います。
(2)環境計画学分野
人間と生物・生態系との共生関係の維持と創造のための環境空間計画の分野です。緑地環境、建築・都市・農村地域の保全・維持・創出の計画設計理論・手法、歴史文化の継承と発展、環境共生技術、管理技術、制度について講義します。また、国内外での調査・研究を通して、調査・解析手法、計画デザインに関する手法についても教授します。
(3)環境創造保全学分野
環境構成要素の機能を解析し、環境の復元・保全・創造や資源管理を行う分野です。具体的には、森林・土壌・河川・海洋における環境の修復・再生・創造や、生態学的視点からの資源管理の理論と手法について講義します。また、野外での調査・研究を通じて、調査・解析、計画・設計、設備管理などに関する手法の開発についても指導します。
(4)環境情報科学分野
地域や地球規模の大気・土壌・水・生物に関する資源情報や、生態系保全に関する情報の入手・解析・有効利用に関する分野です。環境変化予測・対策に関する基礎から応用までの手法について講義します。環境資源とその保全に関するデータや、情報の計測・調査・集積・数理解析・変化予測に関する内外の研究動向についても教授します。
生物資源経済学専攻
当専攻は4分野から構成され、国内外における生物資源、特に食料の生産・流通・消費にかかわる経済問題について考究し、持続型、環境調和型の生物生産政策と流通システムの開発を目的としています。これらの研究活動を通じて、優れた研究能力と高度な専門技術を備えた人材、将来の食品産業や国際協力活動のリーダーとなりうる人材を養成しています。
(1)生物資源・食品経済学分野
生物資源・食品の生産構造と消費構造に関する問題について考究し、食品産業における市場構造と企業、市場成果の問題等に関する講義及び研究指導を行います。さらに、生物資源の需給動向と価格形成、土地利用方式、生産組織、農村地域活性化、政策課題などについて、経済学的・社会学的観点から理論的、実証的な講義及び研究指導を行います。
(2)食品流通・経営学分野
生物資源生産物に関わる農業経営の諸問題ならびに加工食品を含めた食料・食品全般に関わる流通及びマーケティングの諸問題について理論的・実証的に講義します。特に、食品流通の改善や生物資源生産構造との関係について学説史的論述を中心に論じ、普遍的・独創的な理論展開ができる人材の育成を目的に研究指導を行います。
(3)国際食料資源経済学分野
当分野は、国際資源経済と国際フードシステムの2つの側面から国際食料資源経済について論究します。FTA、EPA等の地域経済統合の進展とそこでの貿易・投資の重要性とともに、グローバルな視点からフードシステムの展開について講述し、国際食料資源経済の展開と食料資源の地域的偏在に関わる諸課題について論究します。
(4)国際地域開発学分野
開発途上地域における経済発展と農業セクターとの相互関係、農業構造の特徴、農業資源と食料問題、農村生活および農村社会の特質などについて基礎理論を教授します。さらにグローバル社会の中で先進国を含む多国間の取り組みおよび国際社会の平和と安定に向けた持続可能な地域開発をも視野に入れた専門的な研究指導を行います。