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2025.06.06 研究ニュース

海洋生物学科 柴﨑専任講師が参加した国際共同研究の成果が、微生物学分野の最高峰誌である Nature Microbiology に掲載されました

海洋生物学科の柴﨑専任講師が参加した国際共同研究の成果が、微生物学分野の最高峰誌である Nature Microbiology に掲載されました。

本研究では、ニジマスをモデルとして、IgM抗体が共生細菌叢の恒常性維持や代謝調節に関与していることを明らかにしました。本研究において、柴﨑専任講師は腸炎モデルおよびIgM欠損モデルのニジマスの作出を担当しました。

なお、本成果は、米国ペンシルベニア大学、ニューメキシコ大学、オクラホマ州立大学、福井県立大学との国際共同研究の成果であり、学術振興会海外特別研究員、科研費20K22594、21H02288の助成を受けて実施されたものです。

研究概要
私たちの体は、多様な微生物と共生することで恒常性を保っています。中でも、分泌型免疫グロブリン(sIg)による腸内細菌叢のコーティングは、どの細菌が腸内に定着するか、またその代謝活性に深く関与しています。これまで、哺乳類や魚類においてsIgAやsIgTが腸内環境の調節に寄与することが報告されてきましたが、ヒトや真骨魚類の腸内では、実際にはIgMが細菌叢の大部分をコーティングしていることが知られています。これは、ヒトと真骨魚類の間で保存された特徴として、sIgMが恒常性維持の鍵を握っている可能性を示唆していました。
本研究では、この仮説を検証するためにニジマスを用い、IgMを欠損させたモデルを作出しました。その結果、IgMの欠損により腸内細菌に依存した重度の腸組織損傷や体重減少、腸内細菌の組織侵入、さらには腸内細菌叢の構成異常が引き起こされることが明らかとなりました。また、短鎖脂肪酸や必須アミノ酸を含む細菌由来の代謝産物にも大きな変化が生じていました。
さらに、IgM欠損ニジマスを実験的腸炎モデルに適用したところ、全身性の菌血症と敗血症性ショックにより高い死亡率を示すことが確認され、sIgMが腸内恒常性維持に不可欠であることが裏付けられました。
本研究は、分泌型IgMが腸内細菌叢の恒常性と代謝調節における重要な役割を担っていることを初めて実証したものです。

掲載論文タイトル:Secretory IgM regulates gut microbiota homeostasis and metabolism
掲載誌:Nature Microbiology(掲載日:2025年5月23日)
(URL:https://www.nature.com/articles/s41564-025-02013-8)
※論文の閲覧には、費用が掛かる可能性があります。
海洋生物学科オリジナルサイト:http://www.msr-nihon-university.org/