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2025.06.10 プレスリリース
海洋生物学科の糸井史朗教授がマリンバイオテクノロジー論文賞を受賞

この度、海洋生物学科の糸井史朗教授が、2025年5月24日に広島県呉市で開催された第25回マリンバイオテクノロジー学会大会でマリンバイオテクノロジー論文賞を受賞しました。当論文で使われた写真は、2025年のMarine Biotechnology誌の表紙を飾っています。
糸井教授が責任著者を務めた論文では、生まれたばかりのフグの皮膚に、強力な毒「テトロドトキシン(TTX)」を蓄える特殊な細胞が広がって存在することが明らかにされました。これは、フグが捕食者から身を守るための巧妙な仕組みを、生まれた瞬間から備えていることを示しています。
研究対象は、トラフグとクサフグの2種。研究チームは、TTXに特異的に反応する抗体を使って、ふ化直後の稚魚の皮膚を染色。その結果、毒を含んだ細胞が全身の表皮に均等に散らばっていることが判明しました。まるで「毒の防御スーツ」を着ているかのような状態です。さらに、この毒を持つ細胞は、これまで知られている粘液細胞(ぬめりを出す細胞)やイオン細胞(塩分調整を行う細胞)とはまったく異なる構造であることがわかり、フグ特有の新たな細胞である可能性が示されました。
この発見は、フグがどのようにして毒を利用し、生き延びてきたのかを理解する重要な手がかりになるだけでなく、毒の安全な利用や医療応用など、今後のバイオ研究にも大きな可能性をもたらします。
論文情報:
Marine Biotechnology(2024年)掲載(無料で全文を読むことができます)
「Tetrodotoxin-rich cells scattered in the epidermis of newly hatched larvae of pufferfish of the genus Takifugu」
https://link.springer.com/article/10.1007/s10126-024-10377-x