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2025.09.17 研究ニュース
神経内分泌タンパク質7B2を認識する新規合成ペプチド抗体を用いて内分泌細胞および動物種における発現多様性を明らかにしました
本学獣医学専攻3年の菊池正太氏、本学獣医学科の五味浩司教授および安井禎准教授、秋田県立大学生物資源科学部の穂坂正博教授、群馬大学食健康科学教育研究センターの鳥居征司教授により実施された研究成果が、米国組織化学会のOfficial Journalである Journal of Histochemistry & Cytochemistryに掲載され、表紙にも採用されました。
ペプチドホルモン前駆体はプロホルモン変換酵素(PC)による処理を受けて成熟型ホルモンに変わります。7B2はPC2の分子シャペロン/ナチュラルインヒビターとしてこの機構を制御していることが知られていますが、7B2のPC2活性化ドメインや活性化抑制ドメインの存在様式とPC2発現との関連性については、組織化学的解析が行われていませんでした。
本研究では、内分泌組織における7B2とPC2の発現の関係を明らかにするために、モルモットを用いて3種類の新たな合成ペプチド抗体を作製しました。抗原ペプチドとして、7B2のアミノ酸配列(aa)において、N末端部のシグナル配列直後に位置するaa 1–14、中央部のPC2活性化ドメインの一部を含むaa 77–90、C末端部のPC2活性抑制機能を持つaa 156–168を設定しました。得られた抗体の反応性の違いから、内分泌細胞によって7B2の分子様態が異なることが明らかとなりました。下垂体において、ラットとイヌのメラノトロフでは種間の異なる発現パターンが検出されました。さらに、マンモトロフのプロラクチン顆粒における7B2とPC2の共局在を初めて証明しました。7B2とPC2の相互作用が支持されていますが、これらの発現強度は内分泌細胞によって必ずしも一致せず、7B2とPC2の相互作用の動態に関連する分子状態の変化を組織レベルで示している可能性があります。
研究助成:
本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(C)(課題番号:20K06418)の助成を受けて実施されました。

ジャーナルの表紙に採用されたラット(上段)とイヌ(中段)の下垂体中間葉におけるPC2(緑)と7B2(赤)の共発現パターン(黄)は、7B2のN末端領域(左側)とPC2活性化ドメインを含む中間領域(中央)に存在するエピトープにおいて異なる。PC2活性化阻害C末端領域エピトープはほとんど検出されず、速やかに消失したと推測される(右側)。さらに、イヌのα-メラノトロピン(α-MSH)陽性メラノトロフ(下段、緑)ではPC2も7B2(赤)も発現していない細胞が確認された。α-MSH前駆体であるプロオピオメラノコルチンのPC2切断部位はラットとイヌで異なることから、7B2の様態と関連している可能性が考えられる。

ラット下垂体マンモトロフのプロラクチン(PRL)顆粒における7B2とPC2の共局在を示す免疫電子顕微鏡法による三重染色。小さい金コロイド粒子で標識されたPRL顆粒には7B2(中サイズの金粒子)とPC2(大サイズの金粒子)が標識された。